建築物のデザインを考えるうえで重要な役割を果たすパース図。 
しかし、そのパース図がどのようなものなのかがわからないという方や、書き方を知りたいと思う方も多いでしょう。
この記事では、パース図とは何かというところからその書き方までを初心者の方向けに丁寧に解説します。
ぜひ参考にしてみてください。

パース図とは何?

「パース」とは、“Perspective Drawing”(透視図)の略で、目で見たままの景色を平面に書き写すため、一点透視や二点透視などの遠近法を用いて描かれた透視図を指します。

主に建物やその外観などをパース図に書き写すことで、立体的に完成予想図を表現することができるのです。

建築分野で使われることが多いので、パース全体を指す場合には「建築パース」と呼称することもあります。

パースにおいては、単なる間取り図とは異なり、家具や人、周辺の建物や季節、時間や天気なども反映させることができるので、周囲への影響や景観などの完成後の実際のイメージも掴みやすくなります。パースは主に住宅提案を行う住宅・不動産業界の営業や購入予定者、施工前に建築物を可視化したい設計関係者などの間で広く用いられています。

パース図の分類

パース図は被写体や書き方によってさらに細かく分類することができます。

以下でパースの詳しい分類について解説していきます。

被写体によるパース図分類

パース図は描く対象によって2つに分けることができます。

建築物の内観を描写したパースは内観パースと呼称します。

家具や人などの配置をすることで、建築物の空間内部を繊細に描写可能です。

反対に、建築物の外観を描写したパースを外観パースと呼称します。建築物自体のデザインは勿論、周辺の景観も合わせて描写することで、景色にどのように建築物が溶け込むのかの鮮明なイメージを伝えることができます。

書き方によるパース図分類

パース図はその書き方によっても分類が可能です。

手書きで描いたパース図は手書きパースと呼ばれます。

昔から使われているパース図で、微妙な筆圧やタッチで唯一無二の深みが出るので、現在でも手書きを好む人は多いです。

着彩に使用する道具も水彩絵の具やコピック、色鉛筆など様々にあり、建築物や見せ方に合わせて多彩な表現手法を選べる点もメリットです。

他方、手書きだからこそ、一度作成すると修正が難しいというデメリットもあります。

パソコンで専用のソフトウェアを使用して製作するパース図をCGパースと呼びます。

簡単に修正できるうえに家具などのツールも充実しているソフトも多いため、時間をかけることなく作成可能です。また、CGパースを敢えて手書きのように加工するパースは「手書き風パース」と呼びます。

手書きパース図の書き方

ここからは、手書きパースの書き方についてご紹介します。

透視図法など描く上での基本的な部分も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

書く際に理解すべき「透視図法」とは?

建築パース図に用いられている透視図法とは、消失点を意識し、物を立体的に見せる図法です。

建物の写真などを見た時に、建物の外形の線を結ぶと、写真外かつ地平線上にある点に収束することがわかるのですが、この点を消失点と呼ぶのです。

そのため、消失点をまず定め、そこへと集まる線を基準にして遠くのものほど小さくなるようにすることで、上手く透視図法を用いることができます。

この透視図法には「一点透視図法」「二点透視図法」「三点透視図法」の3種類があり、それぞれ消失点の数が、1点、2点、3点と数が異なります。

建築パース図においては、一点透視図法や二点透視図法を用いることが一般的です。

一点透視図法によるパース図の書き方

まずは、一点透視図によるパース図の書き方をご紹介します。

横4m、縦2.4mの部屋を想定した内観パースを描いていきます。

①基準となる壁面を作るため、1mを表す升目を使い横4m、縦2.5mの壁を描く。

②消失点を壁の下から1.5m、横から2mの位置に設定し、そこから壁の四隅に向かって線を引いていく。

③壁から1m手前に来る床(壁から斜めに1m測る)の升目ラインに線を入れていく。

④床の補助ラインを入れるために、床の下端から斜めにラインを引き、交点から次の補助ラインを定めて線を引いていく。

⑤補助ラインを目安に、家具を平面的に入れていく。

⑥家具をベースに箱を書きあげ、薄い下絵状態で家具の形状をより具体的に描く。

⑦補助線を濃い線でなぞって形にしていく。

⑧立体的に見せるため、影を手前と左右どちらか一方の2面に描いていく。

⑨補助ラインを目安として、窓も書き加える。(下線はあってもなくてもOK)

⑩影の濃淡をつけ、カーテンや照明などのディティールを描く。

⑪窓から見える風景を描く。⑫絵具や色鉛筆などで着色をして完成。

⑫絵具や色鉛筆などで着色をして完成。

二点透視図法によるパース図の書き方

次に二点透視図法を用いた外観パースの書き方をご紹介します。

①目線の高さを表す水平線を描き、その延長線上に2つの消失点を配置する。

②建物の形状を立方体や直方体で簡単に描いていく。この際はまだ透視図法にかかわらず基本的な形状を描く。

③建物のデザインや外観に合わせて細部を追加していく。

④消失点から建物の要素に線を引いていき、遠ざかる程大きくなるように描写していく。この際、屋根やドアなど建物の特徴的な要素に重点を置く。

⑤建物の細部をより具体的に書きこみ、リアリティを高める。

⑥絵具や色鉛筆などで着色をして完成。

パース図は自分で作成する方法と外注どちらがいい?

パース図は上述したやり方で自分で作成する方法と外注する方法があります。

それぞれのメリットをまとめたので、どちらのやり方を選択するか悩んでいる際の参考にしてみてください。

パース図を自分で作成する場合のメリット

自分で作成する場合には、以下の3点のメリットがあります。

1つ目は、「迅速な対応が可能」な点です。

自分達でパースを作成するので、プロジェクトの要件や変更は生じた場合にも、すぐに柔軟に対応することができます。

2つ目は、「社内に知識やスキルを蓄積可能」な点です。

パース図の作成には知識や経験が必要不可欠です。

パース図の作成を通して、作成に携わったチームはパース図に関する知識やスキルが身に付くので、将来的なプロジェクトにも活かすことができます。

3つ目は、「コスト削減」です。

パース図の作成には初期投資として、人員への学習ケアや画材の購入などのコストがかかりますが、長期的に見ると毎回外注する時よりもコストを抑えることにもつながります。

特に頻繁にパースを作成する場合には、内製はよりコストを抑えることができるでしょう。

パース図を外注するメリットパースを外注するメリットとしては以下の3点があります。

1つ目は、「高品質なパースが作成可能」な点です。

パース作りのプロに依頼するため、イメージ通りのリアルで高品質なパース図ができあがります。高品質なパース図を使用することで、より視覚的な訴求効果が高まるでしょう。

2つ目は、「効率的に作成可能」な点です。

パース制作を内部で行うと、社内の人員を割く必要がありますが、外部に委託をすると社内のリソースが浮き、その分他の作業を行うことができます。

かかる時間も短縮できるため、全体のプロジェクトスケジュールも守りやすくなります。

3つ目は、「コスト削減」です。

内製でもコストは削減可能とお伝えしましたが、自社でのパース制作にはどうしても膨大な初期投資が必要となります。

また、頻繁にパース制作を行わないという場合には、必要な時だけパース制作を依頼できる外部に委託することをおすすめします。

【まとめ】パース図を有効活用しましょう

いかがだったでしょうか。

この記事では、パース図の説明や手書きでの作成方法、そして内製と外注のメリットについて解説しました。

パース図は、上手く活用することでクライアントに対して効果の高い訴求を行えます。ぜひ活用してみてください。